研究内容

生物化学研究室では、化学の力で、生命現象を理解し、そして制御する研究を行っています。生化学と有機化学の境界領域の研究を行っており、それぞれ、またはその両方の分野に興味がある学生さんや研究員の参画をおまちしています!
おもしろい分子手軽合成したい!・創製したい! を共通の研究モチベーションとして、“試験管内人工生合成”、“擬天然ペプチド”、“生合成酵素”、“試験管内分子選択”といった技術や分子を駆使し、ケミカルバイオロジー・ペプチド科学・天然物化学の分野に新しい風を吹き込む挑戦を続けています。

理学部化学系の4回生と理学研究科化学専攻の修士課程・博士課程を毎年受け入れています。また、日本学術振興会の特別研究員も受け入れます。希望者には随時研究室見学してもらえますので、後藤までご連絡下さい。

「擬天然ペプチド」の創製

微生物が生産するペプチド、いわゆる「天然物ペプチド」の中には、通常のタンパク質やペプチドにはみられない“変わった”構造をもつものが数多く存在します。これらユニークな構造は、天然物ペプチドが発揮する強い生物活性の源となっています。
これら天然物特有の部分骨格は、人工ペプチド薬剤をつくる上でも有用なのではないか?この発想のもと、天然物特有の骨格を活かしつつ、全体構造や機能は人工的にデザインした「擬天然ペプチド」を創製する研究を進めています。究極的には、望みの薬剤活性をもつ擬天然ペプチド薬剤を、手軽にかつ自在に創り出す技術を確立し、ケミカルバイオロジーや創薬に役立てることを目指しています。 具体的には、以下の様々なアプローチで擬天然ペプチドの創製に取り組む研究を実施しています。

新規ペプチド修飾酵素を「見つける」
微生物の遺伝子の中には、天然物特有のペプチド骨格を構築してくれる未知の有用酵素がたくさん眠っています。これらの隠れた酵素を探し出し、その機能や特性を理解する研究を行っています。
擬天然ペプチドを「合成する」
リボソームによる翻訳反応を試験管内で人工改変しつつ、様々な有機化学反応や酵素反応と組み合わせることで、擬天然ペプチドを人工生合成する技術を開発しています。これにより、私たちが擬天然ペプチド戦略で活用できる天然物特有骨格のレパートリーを拡げ、新しい分子デザインが可能になります。
欲しい活性のペプチドを「創り出す」
1兆種類以上の擬天然ペプチド候補を一挙に合成し、その中から目的とする活性をもつ分子を迅速に選び出す技術を開発しています。この試験管内分子選択と呼ばれるアプローチにより、望みの標的に相互作用する私たちオリジナルの薬剤を創製することができます。
天然物特有骨格の意義を「理解する」
天然物特有のユニークな骨格はなぜ薬剤活性に重要なのか?どのように擬天然ペプチドに組みこめば効果的なのか?これらを化学的に理解することで、新たな擬天然ペプチド薬剤の設計に役立てることを目指しています。

新しい機能をもたせた人工ペプチドの創製

ペプチドは私たちの体内で多種多様な機能を担っており、ペプチドが機能性分子としての大きなポテンシャルをもっていることが分かります。このことから、これまでの進化の過程で生み出されてきた機能に限らず、欲しい新機能をもつペプチドも創り出せるのではないかと考えました。そこで、人工ペプチドの設計技術・合成技術・分子選択技術を駆使することで、自然界にはない新しい機能や役割をもつペプチドの創製に挑戦しています。アイデア次第で幅広い用途に活用できるペプチドを生み出せると期待しています。